森と月

先週末に天竜に行き、材木の天然乾燥の研修をして来ましたので、今日はそのお話です。

 

みなさん、「月齢伐採」って御存知ですか?

 

月のサイクル(29.5日で地球を周回)に合わせて材木の伐採時期を限定することをこう呼びます。

 

木は満月になると月の力に引っ張られて地中の水分や養分を一番強く吸い上げ、逆に新月(月が見えない状態)の時にその力が一番弱まります。

 

月に関しては他にも、満月の日に手術をすると人間も血がよく出るという話はお医者さんならよく御存知。

 

つまり、新月から上弦の月を経て満月に向かうに従って木の中に養分が増えていき、満月から下弦の月を経て新月に向かうに従って木の中の養分が減っていきます。

 

そしてこの減っていく過程(月のサイクルの後半の期間)でのみ伐採を行うことを月齢伐採と呼びます。

 

 

何でそんなことするのかっていいますと、上の写真中央奥に倒れて葉が枯れている木があるのが分かりますかね。これ今、葉枯らし中なんですが、

 

・・・葉枯らし。

 

う~ん、聞きなれない言葉ですね。説明しますね。

 

一般的に山に生えている原木が建築用の材木として機能するためには、木の中の水分を抜かなければなりません。

最終的に含水率20%程度を目指すんですが、原木の含水率はなんと200%。もうタップタプです(笑)

 

当然普通に製材しても水が抜けるまでものすごい時間がかかってしまいますので、木の特性を利用します。

単純ですが、木を根本で切って葉をつけたまま3ヶ月以上寝かせておくんですね。

葉は生きるために水分や養分を吸収しようとしますので、幹の中のものをどんどん吸い上げます。そして吸うものがなくなってくると自然に葉が枯れてきます。幹の含水率は大幅に下がります。これが葉枯らし。

 

つまり、土からの吸い上げが少ない時期に月齢伐採をし、それを葉枯らしすることでゆるやかに木を天然乾燥することができるというわけです。

 

材の表面は固まるけど中心が割れる人工乾燥材に対し、外から徐々に割れながら乾燥していくけど繊維が強く中心に粘りがある天然乾燥材。

 

素材本来の力を活かす伝統工法にも適しています。

 

現在は一本一本バーコードで厳密に履歴を管理。

じっくりと品質を上げていくので若干お値段は張りますが、よく考えたら昔から先人達がやっていたこと。

今一度見つめなおす時期なのかもしれません。

 

森と月の関係の中で生まれた住宅に暮らす。

ちょっぴり神秘的で素敵なお話だと思いませんか。