6月5日~6日に、JIA(日本建築家協会)静岡地域会の「新緑をめぐる軽井沢建築ツアー」に参加してきました。
実は初めて訪れる地ということもあり、世に言う軽井沢とはどんなところかと楽しみにしていました。
残念ながら雨の二日間になってしまいましたが、良い建築に触れ、良い人と出会い、有意義な時間を過ごしました。
色々あるので一息にはいきませんが、何回かに分けて報告させていただきたいと思います。
まずは1日目、静岡から軽井沢に向かって北上する途中に寄った、八ヶ岳高原音楽堂です。
この建築は標高1565mの八ヶ岳東麓の地、長野県佐久郡南牧村に1988年の夏に誕生しました。
設計は吉村順三、アドバイザーに世界的ピアニストのスヴァトスラフ・リヒテル氏と作曲家の武満徹氏を迎え、音楽好きの別荘地のオーナー達の期待を一心に受け、本格的な音楽交流の場として建てられました。
八ヶ岳高原海ノ口自然郷の木立の間を抜けていくと、ぱっと土地が開け、八ヶ岳の稜線をイメージさせる六角形の大屋根が姿を表します。
地上1階地下1階、構造は主体が鉄筋コンクリート造で小屋組が木造となっています。
延床面積は1275㎡、ホールの面積は418㎡で最大250名の人数が収容可能です。
コンクリートの柱を建物の外に出し、そこに大屋根の軒を掛ける構成になっているので、内部空間には大きな柱がなく、非常にすっきりとしています。
逆に外部から立面的に見ると、ともすれば単調になりがちな大きな屋根を、この柱がリズミカルに支えるアクセントの役割を果たしていることが分かります。
ホワイエは建具や開口部の高さを全て合わせ、その上にぐるりと一周水平に見切りを設けてあるので、とてもスッキリとした印象です。
木板張りの天井も、面が複雑に折れ曲がっているので単調さを感じさせません。
ちなみにこの音楽堂で使われている代表的な木材は、カラマツ、米マツ、チーク、ツガ。折りたたみの椅子も、このために開発されました。
六角形を組み合わせた幾何学的な平面に対し、各所で木を丁寧にデザインし続けることで、統一感のある清々しい空間が生まれています。
人と人が集うホールとしてちょうど良いスケールとはこのことかと思いました。音楽を楽しむことはもちろんですが、結婚式をあげる二人にとっても、大切な人達に囲まれた温かい時間を共有できそうです。
周囲の木製建具廻りにもいろいろな工夫があって、全開口した時に建具枠が全て隠れるようになっていたり、残響時間を調整するために壁の仕上げ木を裏返してフェルト面を出すことができるようになっていたり・・・。
天井から釣られた手作りの照明器具も、大きさといいデザインといい素敵でした。
キャットウォークに登ったり、控室や楽屋など色々と見てきましたが、例え施工上ざっくりと木を張ってあっても、その構成自体がしっかりデザインされているので、結論的にはまったく粗さを感じさせない建築でした。
やはりこのあたりの感覚、吉村先生さすがです。
木の可能性を十分に感じ取り私の心も静かに燃えてきたところで、次は軽井沢に向かいます!!