紙コップタワーをつくろう!(第1回)レポート

本日は静岡県教育会館で、静岡こども建築塾の春休み企画「紙コップタワーをつくろう!!」

空間・造形ワークショップを行いました。

最初にけんちくのこと、当塾の目的を説明し、昔から人が「積んで」作ってきた世界中の建物を紹介。

そこを頑張っている私の写真がないのは残念ですが、なんといっても主役はこども!!

積み方のコツを教わったら、一斉にスタートです!!

フロア全体の様子を見て振り返ったら驚き!プレ企画にも来てくれた子がどんどん積んでいきます。

あっという間に身長を超えるタワーができてきたので、こちらで椅子を用意。さらに高みを目指していきます。ここからは慎重に、そ~と置くんだぞ~。

全体的にどうつくるかは実は高さではなく平面にかかっています。

 

手前の子は星形平面。

ひとつひとつの紙コップの間隔もバッチリな彼。

後の展開が楽しみです!

 

四角の子、丸、楕円、さらに城壁や二重螺旋、遠近法を駆使したものまで。

 

おそるべき子どもたち(汗)

 

来る前になんとなくイメージしてきた子、レクチャーを聞いて考えた子、何も考えず無心で取り組んだ子。いろんなやり方があっていいよね。

 

まわりの子の様子を見ながら、子どもは一瞬でグンと伸びる。

 

子どもがどう決めていくか、大人がその目を見つめます。

と、向こうのほうでガラガラガラ~!

振り返るとさっきタワーをつくっていた子の足が少し触れてしまったとのこと(涙)

大丈夫!!これからこれからにすぐ復旧だ~!!

 

でもこの衝撃で、みんな「壊れることもあるんだ、紙コップって怖くないんだ」と理解して安心したみたい。

自分の作品をじっと見つめて、やってやろうじゃないのと俄然やる気が出てきました!!

 

さあ、小学生も未就学児も思い思いに積み上げます。

 

もう積み上げちゃって下さい!!

 

なんてったって先生はこの日のために紙コップ8500個も用意したんですから!

 

足りるかな~、いや、多すぎないかな~と、自問自答を繰り返したこの一週間。

 

まったくの杞憂でした(笑)

 

前に用意しておいたマンハッタンの摩天楼のような紙コップのかたまりがあっという間に無くなっていきます。

 

小さな子も、パパやママの助けを借りながら、でもだんだん自分の力でひとつづつ積み上げていきます。その手が脳とつながっているのが分かります。

 

 

フロア中央では肩の高さまで来た子がそっと紙コップを置いています。

 

紙コップのいいところは、同じ積むにしても積み木や石より隙間ができるので、向こう側とこちら側、光の陰影によってボリュームや立体が把握しやすい点にあります。

 

そしてなにより、軽くて安全なので、初めて取り組む子が崩れても萎縮しなくていい。

何か悪い事しちゃったような気にならなくていいところが大きな魅力です。

 

伸び伸びと取り組める環境の中でこそ、創造性は現れてくるものですからね。

 

大人はその環境をデザインしてあげればいいだけです。

小学4年生のお兄ちゃん二人にインタビュー。この後どうするか作戦会議をしています。

どうする?もっとつむ?中にも置いてみようか?でもせっかくだからもうちょっと高くしよう!

土台を広くとった内部空間は、入ってみると自分達だけの特別な場所。紙コップの隙間から周りの様子を眺めながら、どこから手を付けていくか考えます。

写真奥で写っている後ろ姿の女の子。

どっしりとしたタワーができているのが分かるでしょうか。

女の子二人組で協力して作っているのですが、円柱状に一段一段しっかりと積み上がって安定した形状になっています。

 

紙コップの自立性が何で担保されているかというと、垂直反力と摩擦力です。

 

上の荷重がしっかりと下に伝わる。高い塔で下を抜こうとすると想像よりずっと固く引き締まっています。

 

また、横からの風圧やねじれに対抗しているのは、実は紙と紙の摩擦力。

 

こんなさらさらしたものでも接点にそれはあって、等間隔にバランスよく積まれた中で力が分散して流れ、全体を一体的に支えてくれるようになるのです。

次第にみんな自分達で椅子を持ってきてチャレンジするようになってきました。

 

これは足元だけダブルになっているのかな?

色々な工夫があります。

 

お母さんが見守る中で、モノとモノの間の距離を図って整合させていく。空間把握能力の基本です。

 

モノとモノをぴったりとくっつけることは容易なんです。

でもその間に適切な「間」を設けることが難しい。

それが空間設計です。

 

この空間に関する能力は、開発するのがとても難しく、時間がかかります。

 

建築を学ぼうといざ大学に入ってからやればいいというわけではなく、できることなら小さな時から色々なかたちで親しみたいもの。

 

それはどんな職業についても同じなんですね。ものを並べる、地図を読み、分かりやすく人をアテンドできる。

人の想像力を想像する。

対人関係の距離も視覚的に置き換えて理解できるようになります。

 

因みに左の子は幼稚園の年中さん。

パパの見守る中で立派なものです。

飽きずに小さな達成感を積み重ねることで、「僕はできるんだ」という意識が生まれる。

そしてまた前に手が伸びる。

 

今回小学生だけでなく、未就学児も保護者同伴で参加できるようにしている背景は、その小さな挑戦の姿を保護者の方々に見ていただきたいから。

 

私も自分の子どもの姿で学びました。

 

崩れ、泣き、ふてくされ、でもやり、できたらのめり込む。

よく考えれば実社会の大人と同じ姿がそこにはありました。

作り始めてから50分。そろそろ完成に近づいてきました。

嬉しいね。でもここからは無理をせず(笑)

ピンチのチームはパパやママも一緒に参加!今までよくぞ見守って下さいました。

お願いします!出番です!!

そして会場はラストスパートを走り抜け・・・。

はいそこまで!

終了~!!

頑張りました~!!

 

手を止めてみんなで見て回ろう。

 

他の友だちはどうやっているかな、難しい所をどうやって処理しているのかな?

自分の発想、友達の発想、どうだろう?

上からも見てみよう。思ってもいなかった見え方があるよ。

 

お互いの作品を比較すること。

 

これ、建築の世界でとても大切なことです。

二つ以上のものを比べてみる。お互いの良いところ、選択した手法の可否、視点の在り方など、「気づき」が生まれるようしっかりと向き合うこと。

 

建築は人の命を預かる仕事だからこそ、思い込みに陥らないオープンマインドな姿勢をつくりたい。

お互いの努力と才能を目にしたところで記念撮影です。

みんな達成感ですごくいい顔をしていると思いませんか?自分のイメージを立体空間にして吐き出すことで、洗われたような顔。実はすごく興奮しているんです。頭の中で、知的興奮。

私も参加者のお父さんお母さんと同じ親ですから分かります。本当に嬉しいです。

 

で、残酷ですが、壊します!

ってちょっと待った~!!まだよ~、まだまだ。

盲滅法にやってはダメ。これも学びです。自分の作品から、これを取ったら一番壊れそうだというところの紙コップを一つ抜いて下さい。さあ最後の実習行ってみよう!

 

ガラガラガラガラ~!!!

 

このペアは先程の大きなタワーの二人。一つ抜くと円筒の半分が崩壊する。そしてもう一つで残りの半分が崩壊。つまり、あれだけの量で積んだタワーを、原理的には二つ抜くだけで崩壊させることができる。

残念半分、爽快感半分?だったかもしれないけど、いい学びになったらいいな。

そしてもちろんそれをみんなでお片付け。

片付け大作戦、8500個の紙コップをたった3分で片付けました!!

最後は今日のまとめ。感想や工夫などの振り返りを、空間の後は言葉や絵でまとめてみます。

あの気持ちをどういう言葉に置き換えればいいのか、必死に探す姿がありました。

 

現在の日本では、幼稚園や保育園、小学校、中学校などにおいて空間教育がほとんど為されていないのが現状です。芸術分野において音楽や絵画、彫刻等はありますが、建築は手付かず。もちろん専門性の問題があり、一般の先生には難しいのですが、総合的な感性が養われ、かつ人間が社会生活を営む上で様々なシーンで必要となる能力の学習支援ができないかという思いで始めてみました。

正直に言えば、自分の子どもに教えるならみんなでやったほうが楽しいからというのがありますが(笑)、

やはりやって良かったと思います。

 

今回の取り組みを振り返り、次回につなげていきたいと思います。

 

最後に、参加してくれたみんな、本当に素敵だったよ!またやろうね!!