お盆の最中、新聞に横浜市のマンション杭打ちデータ偽装問題で横浜市が建築基準法違反を認定する方針を固めたと記事が出ていた。国交省も改めて行政処分の追加を検討する方針とも。問題発覚後に改めて検証を進めてきた結果だが、この事実を重く受け止めたいと改めて思う。見えない地中の話だからという現場の気分が、当然構造的につながる地上の建築物に表れてきたという話だ。
私自身今現在一級建築士製図試験を教えているが、今年の試験課題には地盤条件を考慮した設計という一文が盛り込まれている。用途である保育所、児童館・子育て支援センターに加え、熊本地震でも記憶に新しい天井落下対策、省エネ対策としてのパッシブデザインなどまさに世情を見据えた試験課題だが、莫大な予算をかけて行う国家試験として、今後の社会を担う人材育成的な側面からして前述のことは避けられないのであろう。
教えていて強く思うことは、現実を強く認識した者だけが勝ち抜いていくということだ。
作図というのはただ鉛筆できれいな図面がかかれていればいいわけではない。同じ線一本でも、どのような思想背景で、どのような意図で引かれているかで全く変わってしまう。その積み重ねが図面になるだけだ。
だから究極的にはそれを生み出す人間の勝負ということになる。
「設計者としての人格が全てを支配する」
生徒にはそう伝えている。
生み出されるものの質は、その取組方の質に比例する。鉛筆の芯や奮闘した汗で図面がちょっとくらい汚れたって構わない。情熱を持って自分に磨きをかけていってほしい。
このプロセスが必ず自分の人生の糧になるはずだ。
10年前の自分を思い、叱咤激励でのどを嗄らす日々である。