静岡の水災

こんにちは。JIA機関誌に静岡の水害の記事を寄稿しました。ご一読ください。

静岡市治水交流資料館
静岡市治水交流資料館

 今年7月、静岡では集中豪雨により県東部各地で水災が発生しました。熱海の土石流をはじめ、沼津や富士では広い範囲で浸水被害がありました。

 

 富士山南麓の愛鷹山の裾野には、水を想起させる地名の湿地帯が広がっています。この地域の標高は海側の方が高いため排水が悪く、昔から幾度も水災が起きてきました。私も今回被災者への対応にあたりましたが、中には床上50cm以上の浸水が家を建ててから4回目という住宅もあり、もはや十分な修理をあきらめている様子に心を痛めました。

 

 一方で私が住んでいる静岡市もまた、長年水災と闘ってきた街でした。地元以外の方が静岡市の雨水排水のイメージを聞かれたら、「安倍川が市街地を縦断して駿河湾に注ぐように、雨水も北から南に流れる」という答えが多いかもしれません。答えは4割正解。6割は北東の清水港の方に向かって流れる、巴川という二級河川によって排水されていきます。

 

 静岡市の地形は、西側の旧静岡地区と東側の旧清水地区が、駿河湾に面した日本平の丘陵を中央で抱きかかえるように結ばれています。中心市街地の中で一番標高が高い場所が駿府城の辺り(約25m)であり、そこから北東に広がる地域は、ダラダラと緩く下りながら日本平の北麓を廻って清水港に至る地形になっています。

 

 いくつかの支流が集まる巴川は、全長18kmに対して高低差が6mしかない超緩勾配であり、曲がりも多く、流域面積に対して十分な川幅もなかったため、豪雨のたびに洪水をおこしてきました。そこで、今から45年前から巴川総合治水対策事業が行われ、川の拡幅や、上流域における広大な麻機遊水地の整備、分流堰から日本平西麓を通って駿河湾に至る大谷川放水路の開通により、浸水被害が小さくなってまいりました。

 

 近年の豪雨を目の当たりにすると、まだまだ完璧とは言えませんが、静岡市にいらした折には、治水土木の仕事も見てみてはいかがでしょうか。