アンドリュー・ワイエス展

ゴールデンウィーク、東京都美術館で始まったアンドリュー・ワイエス展を見てきました。東京都美術館開館100周年記念事業です。東京都美術館は、1925年に様式建築の名手とうたわれた岡田信一郎が設計した旧館が開館しましたが、現在の建物は1975年にモダニズム建築の巨匠・前川國男が設計してできた新館となっています。

美術館へのアプローチは、広場のGLから地下広場に下りて館内にアクセスする計画ですが、これは風致地区の高さ制限や公園法の関係から、要求床面積の半分を地下に埋めなければならなかったことが起因しています。設計当時、旧館の17,000㎡の倍近い、31,000㎡の床面積の確保を求められたことから、必然的な選択だったとのこと。

新館の建設からも年月が経ち老朽化が進んだため、2010年から2年間かけて、大規模改修工事が行われ、設備の全面更新やユニバーサルデザインの導入が図られました。

アンドリュー・ワイエス(1917-2009)は、20世紀アメリカ具象絵画を代表する画家です。

第二次大戦後に脚光を浴びたアメリカ前衛芸術の喧騒からは距離を置き、ひたすら身近な人々と風景を描き続けた画家でした。故郷ペンシルベニア州と夏の別荘のあるメイン州を生涯拠点とした創作姿勢は、同時代的には控えめに映るかもしれません。

しかし、挿絵画家だった父の手ほどきを受けて画家への道へ進み、20歳の時に開いた個展では全作品が完売するなど、若くして頭角を現して確かな実力を蓄えていきました。

 

今回初めて作品を見て私が驚いたのは、水彩画であみ出したドライブラッシュという画法が精緻な表現を生み出し、作家の精神世界を表現するうえで非常に有効に働いていることでした。決して派手な色彩を使っているわけでもなく、大前提で構図や下書きの精度が決している部分が大きい、普遍的なものを感じました。

今回の展覧会のテーマ「境界」にあるように、作中の窓やドアなどが境界としてのモチーフとして存在しており、境界に立つ時の心の動き、現実に潜むもう一つの真実を描き出そうとしています。建築家の自分としては、物体を通して詩を表す感覚が非常によく分かり、強く印象に残りました。