ATELIER.F

 

目の前に水田が広がる山裾の地。

周囲にはたくさんの自然が残り、農作業や散策、山や川遊びの拠点にも適したこの土地に、

夫婦二人のアトリエを計画することになりました。

 

南北に細長く変形した敷地は、正面の東側が道路、背面の西側が山となっており、接道長さは41m、道路との高低差は南から北に最大1.2m、山の一部は土砂災害警戒区域に指定されています。

 

安全のため山と建物を可能な限り離す必要上、前面道路から十分なセットバックはできません。

プライバシーを確保しつつ、最小限の建築的操作でいかにこの土地を豊かにするか。

 

アトリエとしての利用を考えると、制作スペースや動線はゆったりと、外部とも連続した流れるような空間としたい。

セカンドハウスであることを考えれば、全体として大きすぎず、負担のないサイズにまとめたい。

時には家族や友人が集まり、遊びの基地にする自由さも欲しい。

 

その上で敷地に寄り添い、日常から離れて静かな時間を過ごすための、そっとした佇まい。

 

「鳥が羽を休めるように・・・」

 

中心はコンパクトにまとめながらも、南北におおらかに意識の羽を伸ばしたい。

 

敷地をカギ型の壁で二分して、山側に主体となる生活スペース、道路側に斜め壁のアトリエスペースを配置。

それぞれに深い軒を廻した二種類の片流れの屋根をゆったりとかける。

 

斜面の緑につながる、壁を廻したプライベートな南側のテラス。吹抜けのラウンジでは親しい人々と自由にくつろぎ、二階の書斎では遠くの風景を眺めながら思索に耽る。

 

アトリエには製作用の壁を十分に設け、北側のテラスから入る落ち着いた自然光で空間を満たす。

製作の雰囲気が表に出てもいい。仲間との共同製作も可能だ。

 

引き戸を開けておけばテラスからラウンジ、ギャラリー、アトリエが緩やかにつながった風吹き抜けるワンルーム。

 

内部空間を動く人の姿が美しい、小さな感動があるアトリエを目指しています。