HOUSE.S

「空き地について」

敷地はぎっしりと家が建てこんだ、住宅街の中に位置します。住宅地としては比較的ゆとりがある180㎡ほどの面積ですが、初めて敷地を訪れた時には大きな箱の底に立っているようでした。

 

それは、周りの家々が壁のように迫ってきている上に、この空き地を前提にそれぞれの家が一番都合の良い建ち方をしているので、空き地の身にしてみれば既に街区一帯に生々しい建ち方のルールができてしまっているからでした。

 

よく、手を出すことがためらわれるような住宅地というものがありますが、それは目に見える周りの建物の圧迫感などが原因というだけではなくて、今さらそこに入って行けそうもない雰囲気が、様々な要因の上で醸し出されていることが一番の問題だったりもします。

昔は将来的のために大切に残しておいた土地。今はただ残ってしまった空き地。

そんなことを改めて考えさせられた上で、プロジェクトに向き合うことになりました。

 

プログラムは、夫婦と小さな子供二人のための住宅です。

やるべきことは、「街区のルールの再構築をしつつ、快適な生活環境を確保すること」

 

(配置、外部計画について)

東西と南側を住宅で囲まれたこの敷地において、最も周辺密度が高く、視線や通風、採光の影響を受けやすいのは残念ながら南側です。

そこでまず、ここを高木を植えた庭とし、4方に対し緑の緩衝地帯をつくることにしました。あえてこちらから抜きの空間を提供し、誰もが息をつけ潤いを感じられる状態に一帯をクールダウンさせます。

 

次に建物を各方向の住宅からそれぞれ約5mの離隔をとり配置すます。それによって、建物まわりには北側の道路から均等幅に引き込まれたコの字型の外部空間ができることになります。

私有地ではありますが、この外部空間が「空間の道」の役割を果たすことで、周りのランダムな建ち方をした家々に対し新しい軸性と落ち着きを与え、街区を整えていくことになります。

 

(内部計画について)

子供の子育てのことを考えると、リビングからある程度目が届き、お互いの気配を感じられる状態にあることが望ましい。また外部との視線のバッティングを避けた、明るく楽しい住空間をも目指したいところです。

 

そこで、単純に上下階を2フロアで区切るのではなく、半地下の寝室と中二階のリビングを設け4層のレベルを持つ家とし、中央の吹き抜けホールで全体をつなぐ断面計画としました。

リビングを家の中心と位置づけ半階ごと上下に変化することで、各室が適度な距離感を保ちながら家としての一体感をつくります。

 

また周りの建物の日影変化を検討し、日中どの時間においてもどこかの窓から注いだ光で大空間が明るさで満ちる計画としました。

周辺建物の開口部とは上下方向に半階ずらしプライバシーを確保しているので、周りからの影響を受けにくい自立した住環境となっています。

 

シンプルなフォルムでありながら、半地下から2階までスキップフロアの空間配置とすることで、動線や光の変化を楽しみながら生活の心地よさを感じられる、都市型住宅を計画しています。